数年前に「その1」と「その2」をアップしてから、随分とサボってました、、、。
「その3」を書いたので、1〜3までまとめてアップします。
多少、、、長文です。
「その4」も近日中にアップ予定です(本当か??)
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ダンパーとスプリングについて。(その1)
足廻りをチューニングする際に変更するパーツとして、主にスプリングとダンパーが挙げられます。
スプリングの役目は、車体の重量を受け止める事です。
コーナリング時のロール量やブレーキング時のノーズダイブ量、アクセルオン時のリフト量を決めます。
細かく言うと、コーナリングはスタビライザーも関係しますが、ここでは割愛させて頂きます。
車高は、そのスプリングを受け止める「スプリングシート」の位置によって決まります。
そして、ダンパーはスプリングの動きをコントロールするパーツとなります。
ダンパーの減衰力を決定する際、スプリングが決まらないと全てやり直しとなってしまいます。
チューニングするに当たって、まず最初に必要なのが「スプリングの選択」です。
スプリングを選ぶ時に必要なのが、自由長(スプリング自体の長さ)とレート(スプリングのカタさ)です。
まずは、参考となる車種や実績から自由長とレートを仮選択します。
この時に注意するのが、そのスプリングの有効ストロークです。
あまり短いスプリングを使用すると、線間密着を起こしてしまいます。
そこで、簡単な計算の仕方を記します。
その車両の「(1輪荷重÷バネレート)×2.5」を基準にすれば、おおよそ大丈夫でしょう。
例えば車検証のフロント荷重が600kgの車両とします。
使用したいレートが8kgfの場合、(300÷8)×2.5=93.75となります。
ですから、最低でも94mmのストロークがあるスプリングを選んで下さい。
(スプリングストロークが表示していない場合は、自由長から線径×巻き数『密着長』を引いて下さい。線間密着までのストロークが割り出せますよね。)
では、ストロークがあればオッケーか?と言うと、違います。
今度はスプリングの密着長とロアシートの位置関係を見なければなりません。
選択したレートを使って希望の車高にした時、スプリングロアシートの位置からスプリングの密着長を足して下さい。
この時にダンパーケース上端からスプリングの密着時上端があまり突き出ない事が望ましいです。
突き出し過ぎるとダンパーストロークが残っているにも関わらず、スプリングが線間密着となる可能性があります。
逆に低すぎると、スプリングストロークはあるのにダンパーストロークが無くなってしまいます。
(この場合、ダンパーケースのショート加工が必要になってきます。)
理想は、ダンパーストロークよりスプリングストロークがあって、ダンパーストロークとタイヤストロークが同等。
但し、状況によっては変化しますので(ツインスプリング等)、あくまで基本的な考えとなります。
ダンパーとスプリングについて。(その2)
スプリングが選択出来たら、次はダンパー(減衰力)の選択です。
ダンパーには大きく分けて2種類あります。
ツインチューブ(複筒式)とモノチューブ「シングルチューブ」(単筒式)です。
当然、どちらにもメリットとデメリットがありますが、弊社の考えの中で最もデメリットが少ない構造を選択しました。
弊社は、「単筒式」を採用しています。
更に、「別タンク」を採用する事で、ガス圧を「複筒式」と同等まで下げる事が出来ます。
ガス圧が低く、突き上げが少ない「単筒式」です。
単筒式は、ダンパー内部のオイル室とガス室が完全に分離している為、複筒式(別タンク式は除く)に起るキャビテーションの心配が要りません。
キャビテーションとは?
簡単に説明しますと、ダンパー内部でオイルとガスが混じり合い、泡立ってしまう現象です。
複筒式ですと、ほぼ間違いなく100%キャビテーションが起ってしまいます。(別タンク式は除く)
キャビテーションが起きると、瞬間的に減衰力が発生せず、曖昧な動きになってしまいます。
特にサーキット等の高速コーナーでは、不安定になりがちです。
単筒式は微細な動きでもしっかりと減衰力が発生します。
レース用の複筒式ダンパー(特にカートリッジ等)は、キャビテーションが起きても減衰力をキープする為、低速域の減衰力を大きくしているモノが多いです。
これが、今迄「レース用は乗り心地が悪い」と言われてた原因の一つでもあります。(他にも原因はありますが割愛させて頂きます。)
単筒式では、必要最小限の減衰力でスプリングをコントロール出来るので「乗り心地が良い」という副産物を生みます。
ダンパーは、あくまでもスプリングの動きをコントロールするものです。
減衰力変更は、ロール量のコントロールではなくロールスピードのコントロールです。
ロールが大きいからといって、減衰力で補うという考えはNGです。
但し、S字の切り返し等では、ロールスピードを遅くする事で最大ロールまでストロークする前に反対側へ荷重が移動するので、減衰力をカタくする事で実質的にロール量が減ります。
大まかな減衰力が決まったら、実際に走行しながらセッティングしていきます。
減衰力固定式のダンパーであれば、車高の調整やアライメントの調整を行いますが、ここでは減衰力調整式ダンパーを使用している事を前提とした、減衰力の調整についてお話しします。
ダンパーとスプリングについて。(その3)
減衰力調整方法(サーキット走行を基準とします)
減衰力調整は、スプリングレートや使用するタイヤ、使用する車高が決まっている事としてお話しします。
スプリングレートを変更すると、減衰力調整は初めからやり直しとなります。
また、スタビライザー等を変更しても調整し直しとなります。
タイヤのグリップ(スポーツラジアルからSタイヤに変更、タイヤ幅変更)が変わっても調整し直します。
まずは、使用するダンパーの調整値の真ん中にして走行するのが良いでしょう。
(メーカー推奨値がある場合は、その位置にする)
以下、基本的な方向性を挙げてセッティング順序を記します。
走行するコースを、スピードを控えながら走行します。
ステアリングレスポンスとブレーキングのノーズダイブスピード(縮み)、立ち上がりのノーズスクウォートスピード(伸び)を確かめながら、フロントの減衰力を徐々に締め込んでいきます。
あまりセッティングを詰め過ぎないで、今度はリアに注目します。
注意点として、フロントとリア両方を同時に変更しないことです。ノーズダイブスピードは、フロントのバンプスピードとリアのリバウンドスピードの両方が影響してきます。
スクウォートスピードも同じです。同時に変更すると、どちらの変更が良かったのかが判らなくなってしまいます。
リアは、トラクションの掛かり具合をみながら徐々に締め込んでいきます。
ポイントとして、そのダンパーの特性に慣れるまでは締め込んで(カタくしていく方で)調整するのが良いでしょう。
カタい所から緩めるよりも、柔らかい所から締め込んでいく方が変化を体感し易いです。
迷った時は、一度大きく柔らかい方向に戻してから、再度締め込み方向で調整します。
慣れてくれば、ソフト側に微調整していっても判断出来ると思います。
ある程度の調整が決まって来たら、速度を上げながらフロントまたはリアのどちらかに注目して微調整していきます。
速度が上がると、今まで出なかった挙動が必ず出てきます。
調整していって、例えばフロントをカタくして良い方向に行かなかった場合、一度フロントを調整前に戻してからリアを調整します。
良い方向に行かない時は必ず一度元に戻す。
という事が重要です。
つづく。